· 

第6回コンクール弦楽器部門第1位│上野 通明

第6回ルーマニア国際音楽コンクールにて、中学3年生で過去最年少1位となった、上野通明さん(チェロ)。

その年の数ある特別賞を総なめにした上野通明さんのその後の成長を追ってみた。

 

記事:おおきな木通信 RMS 2013年6月号より

※インターネット掲載にあたって、一部加筆・修正されています。

嶋田

先日のコンサートは楽しく聴かせて頂きました。

 

 

上野

ありがとうございました。

とても勉強になったコンサートでした。

 

 

嶋田

それは良かったですね。それにしても、コンクールで1位になってから3年経つのですね。

 

 

上野

コンクールを受けた時は中学3年生で、参加資格の15歳以上にギリギリ認めて頂けた感じでした。

 

 

嶋田

受けようと思ったのは?

 

 

上野

知り合いの先輩が受けていて、とても良さそうなコンクールだったので受けたいと思いました。また、僕にとってはコンクールの副賞であるルーマニアで演奏出来ることも大変魅力的でした。

 

 

嶋田

ルーマニア演奏旅行は楽しそうでしたものね。では、その演奏旅行の思い出を聞きましょうか?

 

演奏旅行の思い出

上野

お城や美術館、大使公邸などで弾かせてもらって、とても楽しかったです。また、一番の思い出は、作曲家、ポール・コンスタンティネスクの博物館で、彼の曲を演奏出来たことです。

 

 

嶋田

ポール・コンスタンティネスクのことは知っていたのですか?

 

 

上野

いいえ、知らなかったのですが、表彰式でルーマニアからいらしていた審査員、マリン・カザク先生(有名なチェリスト)から楽譜を頂き、初めて知りました。弾いてみるととても素敵な曲なので、ルーマニアに演奏旅行に行った時は、是非演奏したいと思っていました。思いもかけずその作曲家の博物館で演奏することが出来、感激しました。また、ご一緒した会田莉凡さん(第6回グランプリ・バックナンバー160号参照)とデュオを演奏出来たことや、ルーマニアのピアニストの方と知り合ったり共演できたことも素晴らしい体験でした。

 

 

嶋田 

それは良かったですね。でも、学校を休まなければならなかったのではないですか?

 

 

上野

それについては大分悩んだのですが、それ以上に本当に有意義な演奏旅行だったので行って良かったです。また、事情を理解してくれた学校にも感謝しています。

 

 

嶋田 

この体験を生かし、ルーマニアの作曲家の作品を、機会を見つけては日本で演奏して下さい。その他にもありますか?

 

 

上野 

食べ物もとても美味しかったです。それから僕は自然も好きなので、移動中の景色は素晴らしかったです。ご一緒したカメラマンの山田さんにいろいろと写真の撮り方も教えて頂きました。

 

 

嶋田 

街の中や丘陵の頂、その景色の中に一人で溶け込んでいたことを思い出します。(笑)

陶芸の街、ホズレで陶芸の体験をしていた時も、ろくろの前で自分の世界に入っていましたね。

 

 

上野

色々な経験が出来て本当に楽しかったです!

 

学校での日々

嶋田
現在高校生活を満喫されていると思いますが、音楽大学の附属高校というのは、どんな授業があるのですか?

 

 

上野 

普通の高校と同じ科目にプラス音楽の授業が多い、という感じです。体育の授業もあります。が、男子が少ないので、全員でテニスを選択しよう、と口合わせをする・・・・なんてことはあります。

 

 

嶋田 

学年で何人が男子ですか?

 

 

上野 

僕の学年は13人です。

 

鳴田 

それは大変!その他に楽しい授業はありますか?

 

上野 

歌を聴く授業。

 

 

嶋田 

チェロ専攻でも歌ですか?

 

 

上野 

その授業の先生曰く、歌は音楽の原点でもあるそうですし、僕はチェロを始める前から歌がとても好きだったみたいです。

 

 

嶋田

なるほど。

 

 

上野 

僕にとって嬉しい授業は、英語です。今はチェリストの公開レッスンのDVDを見て、英語を勉強する授業です。

英語とチェロの二つの勉強が同時に出来てとても実用的で楽しいです。

 

海外に行くということ

嶋田 

プロフィールにパラグアイ生まれ、と記載されていますが、他の国にも住まれたことがあるのですか?

 

 

上野

パラグアイから一度日本に戻って来て、その後スペインに住みました。

 

 

嶋田 

スペインにはどの位住んでいたのですか?

 

 

上野 

年長から小学校3年生までです。インタナショナルスクールに通っていたので、各国の友達が出来たし、英語も話せるようになりました。そこに通わせてもらったことを、両親に感謝しています。夏に夏期講習で海外に行く予定なのですが、昔の友人とフェイスブック等で連絡を取り合うのも楽しみの一つです。

 

 

嶋田 

そのような体験が、ルーマニアにも演奏旅行に行きたい。という思いにつながったのでしょうか?

 

 

上野 

幼いころ海外にいたせいかどうかは分かりませんが、チャンスがあればできるだけ海外に行きたいと思います。海外に行くというのは、演奏家にとってとても大事な気がします。今は上手く説明出来ないのですが、将来の演奏に必ず何か違いが出るような気がします。

 

 

嶋田 

若いうちに海外の空気を吸うことは必ず演奏に表れると思いますので、どんどん行って下さい。今年の夏は海外の夏期講習なども受けるとの事ですが、留学等も考えていますか?

 

 

上野

はい。出来ればヨーロッパへと思っています。

 

 

嶋田 

それでは、英語は出来るとしても、他の語学の勉強も必要となればチェロの勉強と共にしていかなければなりませんね。

 

 

上野

はい、大変だけど楽しみながら頑張っていきたいです。

 

家族と共に

嶋田 

ご兄弟は何人ですか?

 

 

上野 

姉が二人と僕の3人兄弟で、姉二人も音楽を学んでいます。一番上の姉がピアノ、次がヴァイオリン、そして僕がチェロです。

 

 

嶋田 

ご両親は音楽家なのですか?

 

 

上野 

母は音大を出ていますが、父は違います。父は一人くらいは音楽以外の仕事について欲しかったらしく、3人が音楽家を目指すことに最初は大反対でしたが、今はようやく渋々応援してくれるようになりました。

 

 

鳴田 

それは良かったですね。家では3人が同時に練習するのですか?

 

 

上野 

ピアノの姉は防音室で、ヴァイオリンの姉は自分の部屋で、僕は部屋が狭いのでリビングで練習します。

 

 

嶋田 

それは音楽が好きでなければ、耐えられない状況ですね。

 

 

上野

はい、ご近所の方々に大変感謝しています。

 

 

嶋田 

皆さん将来を楽しみにして応援してくださっているのでしょう!協会も出来る限りの応援をしていきます。

ありがとうございました。

 

 

記事:おおきな木通信 RMS 2013年6月号より

※インターネット掲載にあたって、一部加筆・修正されています。

 


Michiaki Ueno Profile

上野通明プロフィール

公式サイト
www.michiakiueno.com

公式YouTubeチャンネル
@michiakiueno1609

 

 

2021年ジュネーヴ国際音楽コンクールチェロ部門日本人初の優勝、併せてYoung Audience Prize、Rose Marie Huguenin Prize、Concert de Jussy Prizeと3つの特別賞も受賞。

パラグアイで生まれ、幼少期をスペイン、バルセロナで過ごす。13歳で第6回若い音楽家のためのチャイコフスキー国際音楽コンクールに全部門を通じ日本人初の優勝、第6回ルーマニア国際音楽コンクール最年少第1位、ルーマニア大使館賞、ルーマニアラジオ文化局賞を併せて受賞、第21回ヨハネス・ブラームス国際コンクール優勝、第11回ヴィトルト・ルトスワフスキ国際チェロコンクール第2位と次々と国際舞台で活躍し、これまでにソリストとしてワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団、スイスロマンド管弦楽団、ロシア交響楽団、 NHK交響楽団、読売日本交響楽団等国内外のオーケストラと多数共演。また、ジャン=ギャン・ケラス、オーギュスタン・デュメイ、ホセ・ガジャルド、堤剛、諏訪内晶子、伊藤恵等、著名なアーティストと共演し好評を博す。 NHKBS「クラシック倶楽部」、NHKFM「リサイタル・ノヴァ」、「ブラボー!オーケストラ」、テレビ朝日「題名のない音楽会」等に出演。

 

桐朋学園大学ソリストディプロマコース全額免除特待生として毛利伯郎に師事し、2015年秋よりオランダの名チェリスト、ピーター・ウィスペルウェイに招かれ渡独。デュッセルドルフ音楽大学にてコンツェルトエグザメン(ドイツ国家演奏家資格)を満場一致の最高得点で取得、2021年よりベルギーのエリザベート音楽院にも在籍しゲーリー・ホフマンに師事。

更なる研鑽を積みながら、主にヨーロッパと日本で活発な演奏活動を行なっている。

 

公益財団法人日本演奏家連盟宗次エンジェル基金、ロームミュージックファンデーション、第44回江副記念リクルート財団奨学生。岩谷時子音楽文化振興財団より第1回Foundation for Youth賞、第6回岩谷時子賞奨励賞、京都青山音楽賞新人賞受賞。

第31回出光音楽賞、第24回ホテルオークラ音楽賞、第21回斎藤秀雄メモリアル基金賞受賞。令和3年度、文化庁長官表彰を受彰。

使用楽器は1758年製P.A.Testore(宗次コレクション)、弓は住野泰士コレクションよりF.Tourteをそれぞれ貸与されている。

 

NPO法人日本ルーマニア音楽協会

〒106-0047 東京都港区南麻布4-5-48フォーサイト南麻布4階

 

Romanian Music Society in Japan
4-5-48-4F Minami-Azabu Minato-ku Tokyo 106-0047 Japan

 

TEL:050-6865-5916

e-mail:info@r-ms.org